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シング『アラン島』 [本]

がさつで愚かしい者たちがめいめい喚(わめ)きあっている姿が滑稽に見えてきました。テレビのワイドショーのことですが。

実はいま、100年ちょっと前に書かれた『アラン島』を読んでいます。

この本は、アイルランドの西の端、アラン島について劇作家のジョン・ミリントン・シングが書いた紀行本です。部屋のどこかに原書があったと思いますが、見つからないので、岩波文庫の翻訳を読んでいます。原文で読もうと思っても、方言だらけで読むのは難しいでしょうが。

「アラン島」というのは、実は3つの島から成っている群島です。私もその中の一つの一番大きな島に行ったことがあります。そこは「ゲールタハト」と言って、アイルランドの母語であるゲール語が日常的に話されている地域の一つです。

100年以上前に、その島を、シングは、ゲール語習得と現地調査のために4度訪れました。シングは現地の年寄りの語る妖精の話やら、昔話などに耳を傾け、それらを記録しました。ドがつくほどの田舎に伝わる素朴に聞こえる話の中には、シェイクスピアを思わせるような話があったりして、面白いです。もちろん、シェイクスピアも、ヨーロッパ大陸に伝わるいろんな話を混ぜて使っていますけれども。

また、シングが滞在している素朴な島に、本島から(たぶんイギリス政府が派遣したのでしょうが)官吏が税金を取り立てに来て、追い剥ぎよろしくお婆さんを身ぐるみをはいで行く様子をシングは過度な同情もせず、冷静に描写しています。その冷静さゆえに、余計に、心が苦しくなりました。

この本は4部構成になっていますが、今日は第2部まで読み終えました。半分です。





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