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父親の事故 [雑感・日記・趣味・カルチャー]

仕事中に母から電話があったが、出ることができなかった。どうせ大した用事でもないだろうと思ったので、仕事から帰ってきてから電話してみた。

電話に出た母は、普段とは違う深刻な口調で「今日電話したのは、実はね」と語りだした。父親が一昨日の晩、階段から落ちて頭を打って、目の周りが黒く腫れ上がっているという。しかも、わけのわからないことを言い出したのだそうだ。テレビの画面に表示されている時計の時間が違うから修正しろと母親に要求したという。父親は、6時1分ではなくて15分のはずだから15分にしろというのだが、時計はテレビの受像機が表示しているものではなく、テレビ番組が表示しているものだから、直しようがない。6時15分になったときに、「母は15分になったよ」と言ったら、父は納得してくれたという。

そういうわけで今朝、病院に行くことになったのだけれど、母が父をクルマで送るというのに言うことを聞かず、自分で出かけたそうだ。しかも、サンダル履きで。母はクルマに乗るときはサンダルはダメだと念を押したのだけれど、言うことを聞かず、靴はクルマに載せて、サンダルのまま行ったという。ふだんサンダルで運転するような習慣もないので、母親は変だと思ったそうだ。

私に電話をかけてきたのは、母親が父親を見送った直後だった。病院が開くのは9時だから、電話をかけてきたのは9時過ぎだったようだ。送り出した父親が心配になって、母は私に電話をしてきた。

そこで事件が起きた。病院の駐車場で、父親はクルマをぶつけてしまった。2名が乗車中の車にフロントバンパーをぶつけたのだ。しかし、父親は事実と反対のことを主張する。自分は後ろをぶつけたのだとか、相手のクルマには誰も乗っていなかったとか、時間は6時頃だったとか。事故の連絡が警察から入り、母は、父親にクルマを運転させてはいけないと叱られたそうだ。事故の処理は保険会社がやってくれることになったし、誰も怪我をしなかったので、心配はないのだけれど、父親の状態が非常に気がかかりである。

階段で頭を強打して、脳が変になってしまったのかもしれない。

父親はいつも寝る前にきちんと居間の照明を消すのだけれど、昨晩、光光とつけたまま寝室に行って寝ていたそうだ。

3月の半ばに私と長男が帰省した時も、父の様子が少し違っていることに気づいた。長年、父は自治会費の集金と集計をしてきたのだけれど、我々が到着したときに、我々のことをほぼ無視して、帳簿の計算がどうしても合わないとブツブツつぶやきながら何十回となく計算を繰り返しているのだ。市役所の税務課にいたこともあるので、いつもはそういう計算は難なく処理してしまう人なのに、妙な感じだった。

翌朝、墓参りに行ったときも、父親はマッチで新聞紙を燃やして線香に火をつけることができず、このマッチはしけっているから新しいのを買ってこなくてはいけないと言って、何本もマッチを無駄にしていた。見かねた私が助け舟を出したら、一発で火がついた。父が線香に火をつけられないことなど、これまで一度もなかった。墓参りのときに、数年ぶりに父親の妹夫婦に会ったのだけれど、不思議なことに父親は妹と一言も言葉を交わさないのだ。

その後、小旅行に一緒に出かけたのだが、クルマの中でも一言も喋ることがなかった。いつもなら、なにかつまらないことでも話すのだが、そのときは本当に話題がなかった。私の弟の子どもたち二人が車内で大喧嘩しても何も言わないのである。いつもはイライラしながら声を荒げて兄貴を怒るのだけれど、そのときは無反応だった。これは驚くべきことだった。また、大学に合格したばかりの私の息子とも、何か話すことがあるはずだけれど、もっぱら私の母親と長男が話しているのを横で聞いているような感じだった。実際、聞いていたのかどうかもわからない。

父親は退職してからは、特に何もすることもないので、昼間ぼうっとテレビを見ているという。図書館で小説を借りてくることもあるけれど、何度も同じ本を借りてきてしまうことに母親は呆れている。母親はいろんな役員を任されているので(民生委員を含む)、東京に出張したり、ボランティア活動や手話のセミナーの講師を務めたり、手話サークルの会合に出たりと、毎日忙しく駆け回っているけれど、父の方は対照的に何もせずじっとしているだけだ。この頃は花粉症がひどいので、散歩にすら行くこともない。

現役時代から4人組で仲良くしていた友人たちもみな亡くなり、父親一人だけになってしまった。年に数回みんなで旅行に行っていたのだけれど、そういうこともできなくなってしまった。

私の弟の子供も今年小学校に上ったので、保育園の送り迎えの仕事もなくなってしまった。ほんとうに何もやることがないのだ。

昨年、白内障の手術もしているので、運転も怖いという。5年前くらいまでよく埼玉にクルマで遊びに来てくれたのだが、そういうこともまるっきりなくなった。

痴呆症というのは、怪我がきっかけで発症することがある。年をとると、運動をしなくなるので、まず足腰が弱くなる。そのせいで怪我をしやすくなり、それが痴呆症を誘発するのだ。

まだ74歳なのに、ボケるのは早すぎる。

父親は、母親とは違って、好奇心がなく、勉強が嫌いで、他人と話をするのも苦手なタイプ。しかも糖尿病を患っているので、ボケる可能性はすこぶる高い。

ボケた父親を介護する母親が気の毒だ。明日、病院に行ってきちんと脳の検査をしてもらうことになった。今度は母親がクルマで連れて行くという。

今晩もまた夜中にトイレに行くときに階段から落ちたら怖いので、夜中でも階段と玄関はライトを付けておくようにと忠告しておいた。

3年ほど前の話だが、近所のオバさんは、娘の家に泊まりに行って、夜中にトイレに立って、階段から落ちてそのまま亡くなってしまった。

15年以上前になるが、私の妻の祖母は、縁側で洗濯物を干しているときに、足を滑らせて石に頭をぶつけて、頭蓋骨を骨折し、脳みそを半分残す手術を受け、数年間、植物人間としてミイラ状態で生きていた。

いますぐにでも病院で診てもらったほうがいいのだけれど、今回は緊急ではないので、救急車は来てくれない。その間に、症状が悪化することはないのかもしれないが、心配だ。

私の弟は親たちの近くに住んでいるし、仕事は病院の事務なので、それだけが安心材料だ。