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現代に甦る小津安二郎の世界【有馬稲子、岡田茉莉子、岩下志麻、杉村春子、青木富夫、ヴィム・ヴェンダース、ホウ・シャオシェンほか】 [映画]



これは1990年代のNHKの番組でしょう。およそ30年前の映像です。小津映画を巡っていろんなことが語られていますが、特に印象に残ったのは、若者たちが(その中に私も含まれています!)、小津映画に小津が意図なかったものを読み取っているという話です。若き日の唐沢俊一が一拍余計に映像が足されていることに酔ってしまうと、小津映画の魅力を語っているのですが、本当にその通りだと思います。日常は冗漫なのです。番組の中でも取り上げられていましたが、『お早う』の中で、佐田啓二と久我美子が駅のプラットフォームで天気の話をしながら愛を語り合うシーンはまさにそれです。小津が人間の本質を描こうとしていたことがわかるシーンだと思います。


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青柳信雄監督『愛の世界 山猫とみの話』(1943年、東宝) [映画]



高峰秀子の可愛いらしい笑顔が見られるのはいつになるのかと思いながら3分の1を見たところです。

この作品は軍国主義時代のものです。不良少女を集めて職業訓練をしながら、「お国のために」働かせている学校に、16歳の小田切とみ(高峰秀子)が連れて来られます。彼女は先輩たちと仲良くできず、取っ組み合いの喧嘩に発展します。

先生はいったん二人を引き離し、不良少女たちに教訓を垂れます。その教えが心に沁みます。いま日本は戦争をしているんだ。戦っていないのはお前たちだけだ。申し訳ないと思わんのか」。

現代は、「社会のため」「社会貢献」という言葉が就職活動をする若者たちの口に上ることが多いですが、常々私がその言葉に違和感を覚えていた理由がわかりました。軍国主義、国粋主義と、会社に対する忠誠心や社会貢献という意識は相似形だったのです。

私たちは戦後80年近く経っているのに、まだ自分のために生きることが許されていないのです。怖くなりました。


追記:傑作です。いろんなことが学べると思います。最後は悲劇で終わるのかとヒヤヒヤしましたが、さすがに戦前の映画ではそれはなかったようです。不良少女にも人間らしい心を秘めていて、周りのものたちが暖かく接すれば必ず改心してお国のために尽くす人間に成長するという物語です。表向きはですがね。

原作には佐藤春夫が関わっていて、特殊効果撮影は円谷英二、助監督に市川崑なのですから、そんな単純には解釈できませんがね。

こういう映画は戦前・戦中を知るための貴重な資料です。こういう映画のファンがきわめて少ないのが残念です。




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渋谷実監督『十日間の人生』(1941年、松竹) [映画]



井上正夫は渋い演技をしますね。初めて見ました。時代劇のスター高田浩吉は美男子だし、田中絹代は当時31歳。健気で可愛いです。若大将シリーズで有名な飯田蝶子さんは、43歳くらいですけど、すでに完全なおばあさんですね。渋谷実は『本日休診』(1952年)の監督です。

1941年の映画ですが、戦時下にあったわけですから、択捉(えとろふ)では何をしようとしていたのでしょうか。高田浩吉は「半年で帰ってくる」と言っているくらいですから、開拓事業の一環でしょうか。Wikipediaによると、1940年には「海軍が飛行場を整備し始める」と買いてあります。送り込まれた男たちは、飛行場建設の肉体労働かもしれません。女たちは彼らの食事の世話などかもしれません。もし田中絹代が択捉に行くことになったら、どうなってしまっていたのか、考えただけでもぞっとします。敗戦後、ソビエト軍が北方領土を占領し、在留日本人に強制労働をさせ、多くの死者を出しました。その歴史を考えたら、怖い映画です。この映画のタイトルにある「十日間の人生」とは、択捉島では10日も生きられないということを表しているのかもしれません。


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中村登監督『我が家は樂し』 (1951年、松竹) [映画]



先日YouTubeでDLした元の白黒版を途中まで見ていました。カラーがあることを知ったので、このあとはそちらを見ます。物語はシンプルですが、戦後の貧しい生活が如実に描かれています。同じような貧困状態に置かれている日本の大多数の人々は共感できるところが多いと思います。岸惠子のデビュー作だだそうです。高峰秀子、山田五十鈴、笠智衆、佐田啓二、高堂國典がいい味を出しています。

我が家は楽し - Wikipedia

あらすじが書かれているので、読まないほうがいいでしょう。

中村登監督は、岩下志麻主演の『紀ノ川』の監督なのですね。『紀ノ川』の原作は有吉佐和子の小説ですが、私も10年以上前に観ました。NHKのBSで山田洋次監督が日本映画100選に入れていたものです。



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ゴダールが死んだ! [映画]

Jean-Luc Godard, giant of the French new wave, dies at 91 | Jean-Luc Godard | The Guardian

Jean-Luc Godard: Legendary French film director dies at 91 - BBC News

私は学生時代にゴダール作品を観まくりました。同じ作品を何度も繰り返し観たということです。どうしてそこまで惹かれたのかわかりませんでしたが、いまは言語化できます。私なんぞが偉そうに論評するのはおこがましいのですが、ゴダールは物語をぶっ壊したのです。若きの私は、そこにリアルなものを感じ取っていたのです。

通俗的な小説や映画に展開される物語は現実ではないことは誰もが百も承知です。しかし、我々は生の現実を物語化して理解しようとしていることに無自覚です。それが嘘っぱちだと見破ったのがゴダールなんです。ゴダールの作品では、目の前で人がピストルで撃たれて死んでも、淡々と時間が進み、何事もなかったかのように人々の生活は続きます。誰の人生観にも何の影響も与えません。それが生の現実なのです。それを視界の曇った我々に投げつけたのが、ヌーベルバーグ作品だったと私は認識しています。

ゴダールが死んだということは、我々が享受しているインチキな物語を俯瞰する視点を失ったということかもしれません。もし悲しむのであれば、それを悲しむべきです。

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Spider-Man: Peter Fights Flash at School (TOBEY MAGUIRE SCENE) [映画]



朝っぱらからファイトシーンの動画を何本か見てしまいました。私のメンタルヘルスに影響が生じてしまうので、見ないようにしたいです。

昨日だか一昨日だか忘れたのですが、クルマの中でラジオを聴いていたら、暴力の中に文化が現れるというコメントをしていた方がいました。映画関係者のようです。ものすごく得心しました。

映画って、クリント・イーストウッドの『ダーティーハリー』シリーズもそうですが、国家権力的な暴力と、私的な暴力をどう切り離すか、という問題を考えさせてくれるものが多いです。さらに、正義とは何かを考えるためのメディアにもなってくれます。いずれも、私には正解はわかりませんが、まさに暴力は文化なのです。



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Dirty Harry IV - Too much sugar is bad for you [映画]



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Charlie Chaplin Moonwalk [映画]



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寅さん鉛筆一本のセールス [映画]



私もバイトで店員をやったことがあるので、モノを売る大変さはわかっているつもりです。間に何かをかまさないと、モノの移動というのは円滑にはいかないものです。寅さんは、物語や情緒というものをかませています。スーパーやコンビニで働いている人は意識しないことかもしれませんが、これって大事なことですよね。ビジネスというのは、モノのやり取りだけではありませんからね。



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