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Chet Baker ~ Every Time We Say Goodbye [音楽・楽器]



ミュージシャンばかりではないけれど、クリエイティヴな仕事をしている人は、生み出さなければいけないというプレッシャーを常に感じている。

すでにあるものを加工する工場労働者とは違って、クリエイターというのは、ゼロから何かを作る仕事をしている。クリエイターは、オンとオフが明確ではなく、つねに頭が回転していて、心も体も休む暇がない。しかも、いつ自分が何も生み出せなくなるかという不安を抱えて生きている。生み出しても、それが売り物になるのか、自分の人生はここで終わるのではないのかと怯えていて、気が休まらない。

ミュージシャンが、ライブ・コンサートなどで、ファンに感謝している姿を見ると、そこには表現されていない部分を感じて辛くなってしまう。

私が、チェット・ベイカーを聞くようになったのは、彼が謎の転落死を遂げてからだ。私が一人暮らしをしていた若い頃深夜によく聴いていた。彼の甘い声と物悲しいトランペットは、私の切ない気持ちを慰めてくれたのだけれど、聴いているうちに、だんだんあちらの世界(死)に引き込まれてしまいそうになり、ぐいっと自分に歯止めをかけるのが辛かった。

いまも私は辛くなると、チェット・ベイカーの曲が聴きたくなる。すでに進むべき道から転落しているので、彼をまねてわざわざ転落死する必要はなさそうだ。




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