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小沢昭一的こころ「隠居、隠遁 永井荷風について考える」 [雑感・日記・趣味・カルチャー]



高校生の頃、私は日曜日の朝、寝床でラジオを聴き(FM東京の串田孫一の「音楽の絵本」という番組や、クレハ提供のAMラジオの釣り番組)、優雅な休日の朝を楽しんでおりました。今考えると、高校生としては渋い趣味ですね。

北アメリカ大陸を凍らせた大寒波が日本にも襲来しているらしく、今朝は珍しく寒さを感じて、いつもより30分も早起きしてしまいました。布団から出られるほど体が温まるまで、寝床でラジオ代わりに、「小沢昭一的こころ」というかつてのTBSラジオの看板番組の録音を聴きました。

ご存知だと思いますが、小沢昭一は7年前に逝去されています。晩年は、このラジオ番組で人気を博しましたが、芸達者な俳優さんとしても有名な方でした。『にあんちゃん』という映画の中で、在日朝鮮人役の北林谷栄の思い出を語っている場面は、木下惠介監督の『楢山節考』(1958年)の田中絹代のエピソードを思い出しました。

前半の数回は、永井荷風の「濹東綺譚」やら、大金の入った買い物カゴを電車の網棚に置き忘れたという有名なエピソードを紹介しています。落語調の小沢節の語りは、聞き手をけっして飽きさせません。ただ、後半は、ネタがなくなってしまったようで、荷風とは直接関係のない話が多くなります。唯一、自身の青春時代の思い出話は印象に残りました。早稲田の学生だった頃の小沢昭一は、荷風散人のひそみに倣って浅草のストリップ劇場に通いつめ、花形ストリッパーに恋をしてしまいます。小沢青年は、何を勘違いしたか、「ぼくはあの人と結婚するんだ」と思いつめ、真面目な顔をして母親を劇場に連れて行き、母親に呆れられ、帰りに二人であんみつだかなんだかを無言で食べて帰ったそうです。だれにでも青春時代の苦い思い出はあるものです。隠居・隠遁の話とはまったく関係ないですけどね。



自分の葬式を目撃するという恐ろしいお話ですが、なぜか現実的です。