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英語教員にとっての4月とは [資格・学び]

4月は、教員にとって、学生との間で、これから1年間円滑にコミュニケーションを取るための準備段階に当たる。その段階で、英語教員がすべきことは3つある。

第一に、用語の定義を合わせる必要がある。たとえば、テーマとトピックの違い、パラグラフとエッセイの違いなど一から説明する。パラグラフを段落だと思っている人もいるし、トピックセンテンスがわかっていない人たちがふつうなので、話の組み立て方を丁寧に説明してやらなければならない。

第二に、英文法の基礎を伝授する必要がある。いまどきの学生たちは基礎文法をあまりに疎かにしすぎているので、名詞や動詞の扱い方や、品詞という概念(単語の役柄)がわかっていない。もはや驚くべきことではないが、形容詞と副詞の区別すらつかない学生も多い。日本語同様に英語にも形容動詞があると思っている学生もいる。どのクラスにも、そのレベルの学生がいることを前提に話をしなければいけない。私は毎日のように日本人相手に、いわば、異文化コミュニケーションをしているのである。

第三に、英語の発音の基礎を教えなければいけない。世間一般にはオーラル教育が進んでいるように見えているが、大方の学生は、発音がデタラメである。そんな学生に、英語の発音を最初から教えるのは骨が折れる。もっとも、日本人の英語学習者のほとんどは犬(dog)や猫(cat)すら、正しく発音できていないことに気づいていないのだから、仕方がないかもしれない。

以上の3つを教えるのに、5月半ばまでかかってしまう。その後は、その理解を徹底し、適切に運用するためのトレーニング期間に移行する。英語教員としては、そこでようやく軌道に乗った気分になれる。少しは楽になるのだが、学生たちは教えたことをあっという間に忘れてしまうので、折に触れて同じ話をまた最初から教えなければならない。そういう繰り返しを1年間するのが、教員の仕事だ。それを毎年毎年繰り返す。それをすべての15近くのクラスで繰り返す。体力的にも精神的にもきつい。ノイローゼになるはわかっていただけると思う。そのように大変な作業であるにもかかわらず、その労力は適切に評価されることが全くない。将来への不安も拭えない。毎日毎日、「早く死にたい」と思うのもお分かりいただけると思う。


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