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日本の英語教育は終わった。 [資格・学び]

木曜日の前期の授業が終わったおかげか、軽い熱中症だったせいか、今日は8時間も寝てしまった。ふだんは忙しいので6時間寝れば御の字だが、数ヶ月ぶりに十分な睡眠が取れた。

『翻訳ってなんだろう?』(筑摩書房) - 著者:鴻巣 友季子 - 鴻巣 友季子による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

翻訳とは〝体を張った読書”だと言えるでしょう。翻訳とはその作品の当事者、実践者になりながら読むこと。 「批評が作品へのかぎりない接近だとすれば、翻訳はその作品を体験することである」と言ったのは、フランスの有名な翻訳学者アントワーヌ・ベルマンでした。この「他者の言葉を生きる」スリルは精読するだけでは味わえないものです。声優さんの仕事の楽しさと少し似ているかもしれません。


今の英語教育は、こういう翻訳の楽しみを学生たちから奪い取ってしまっている。英語を英語で考えろなどというファンタジーを植え付けて、勉強をしているフリ、英語がわかっているフリをさせている。

阿部公彦『史上最悪の英語政策―ウソだらけの「4技能」看板』(ひつじ書房)、鳥飼玖美子『英語教育の危機』(筑摩書房) - 沼野 充義による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

著名なロシア・ポーランド文学者の沼野充義さんによる2冊の批評。批評と言うか、紹介かもしれない。いずれにせよ、私の考え方は、阿部さん、鳥飼さん、沼野さんの考え方に同じである。英語のできない愚かしい文科省の役人、利権の甘い汁を吸うことばかり考えている政治家、虎視眈々とビジネスチャンスを狙うだけの底の浅い起業家の提言・推奨・強要している英語教育法とは180度異なるものである。

コミュニケーションの厳密な定義もせずに、コミュニケーションを中心にカリキュラムを組むような文科省。そして、役人たちの意向を忖度するしかない英語教師。彼らに振り回されて読解力・思考力・批評力が年々劣化している学生。教員も学生も、引いては日本人全体が自分の頭や体で「考える」力を損なう「教育」(そんなものは教育とは呼べない!)の被害者・犠牲者になっている。最近は炎天下に追いやられ熱中症で殺されている。

今の多くの英語教育者、特に英語で英語を教えている教育者は、教科書の正誤問題や並べ替え問題などの練習問題を英語で質問して答えさせたり、単語テストをして終わり。英文を国語の教科書のように構造分析をしたり、解釈したり、批判したりして、思考の体操のためには使っていない。教師が明かす答えを暗記すればテスト対策が講じられるのだから、自分の頭で考える必要がない。教員は、議論をしなさいと生徒や学生に促すこともあるが、考える癖がついていない人たちに、英語で議論せよと命じても、誰も口を開こうとしない。いや、うまく言っている教室もあるという反論があるかもしれない。それはそうだろう。そういう生徒や学生を集めただけ、いや一部に能力の高い学生がいるクラスでは、積極的に英語でコミュニケーションをしているように傍目には見えるからだ。しかし、内実、議論に中身がないのである。やっているように見せかけているだけなのだ。

そもそも日本語でだって議論(discussion)できないのに、英語でできるわけがないだろう。思考停止の日本人の代表である国会議員が国会でまともな議論もせず、数の論理だけでバタバタと法案を通しているのに、どうして日本人に議論などができるのだろうか。賛成の人は手を上げてくださいで、すべて終わってしまう政治がなされているこの国で、どうして議論などというものが成立するのだろうか。不思議でならない。考えているフリ、やっているフリ、仕事をしているフリ、勉強をしているフリ。そういうのが、大多数の日本人の伝統なのである。

沼野さんの言う通り、というか私の持論(持論とは、その人が長年主張し続けていることであって、風変わりな考え方といって批判の対象になる主張という意味ではない!)でもあるが、グローバル化に対応するのなら、英語だけではなく、中国語やロシア語や韓国語やスペイン語やフランス語がドイツ語などの教育も小学校から行うべきではないだろうか。奴らは、グローバル化の定義すらわかっていない。

こういう問題の根本原因は、白井聡の『国体論 菊と星条旗』(集英社新書、2018年)を読めばわかる。簡単に言うと、日本はアメリカの属国でしかないので、考えるのはアメリカであって、アメリカの収奪システムの中に組み込まれた日本人は、ひたすらアメリカの意向に従っていればいいというシステムになっているということ。残念だが、これが真実だ。大阪のカジノも水道民営化も生命保険も原発も自衛隊も英語教育も大学改革も種子法もみなアメリカの意向を受けたものでしかない。自分の頭で考える力を完全に失った日本人には破滅しかない。


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