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川島雄三監督『幕末太陽傳』(1957年) [映画]



幕末太陽傳 - Wikipedia

この映画を観るのも2度目です。

落語の「居残り佐平次」をベースに、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」「明烏」「百川」などを混ぜ合わせた上で、幕末の志士たちの尊王攘夷運動を重ね合わせるというアクロバティックな物語になっています。

主役はフランキー堺。激動の時代を生き抜く知恵者の庶民を演じています。「居残り佐平次」は立川談志が「品がないから、俺は好かん」と言って嫌っていた演目です。労咳(結核と呼ばれるようになったのは明治以降)を患う佐平次は頭も体も駆使し、遊郭での居残り稼業を逞しく(図々しく)続けながら、さまざまなトラブルを解決し、周りの人間から厚い信頼を得て、さらには花魁二人に言い寄られるほどにまで至ります。しかし、「そういうのは胸に障るから、俺は女を断っているんだ」と言って、決して誘いに乗らないのですから、格好いいじゃないですか。

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ラストは「地獄も極楽も関係ねえ。俺はまだまだ生きるんでえ」と言いながら、佐平次が品川の海岸を走って遠ざかっていくシーンで終わっていますが、敗戦後12年目ですから、時代の勢いを反映したものだったのでしょう。

実は、この作品を撮った6年後に川島雄三監督は筋ジストロフィー症により45歳の若さで亡くなっています。川島監督は自分の寿命がもうすぐ尽きることを知っていたのかもしれないと考えると、尾のエンディングがより力強いものに感じられます。

作品のイントロは現代(1957年頃)の品川の映像から始まっていたために、原案では、ラストも現代の品川に佐平次が走り出ていくというものだったそうです。フランキー堺らの反対で、現在残っている形になっていますが、むしろ、そちらのほうが喜劇作品らしくて良かったかもしれません。その終わり方であれば、先の見えない混迷の時代を生きる我々にも現実に戻る力を与えてくれたように思えます。

石原裕次郎の出演する作品の常連である芦川いづみさんも出演していますが、本当に可愛らしいですね。現在85歳だそうです。現実に引き戻されますね。

もうひとつの学芸員室-病まざるものなし-日本の感染症・病気

ここには労咳(ろうがい)は入っていません。

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