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卯年はこういう年になるという人は嘘つきです [雑感・日記・趣味・カルチャー]

干支の観点から、今年はこういう年になる傾向があると主張する人が1月になるとたくさん現れます。彼らは自分たちが統計学的なデータをもとに科学的に真実を語っているつもりになっているのですから、タチが悪いです。それは科学でも統計学でもなく、ただの占いです。

それはなぜか。

答えは小学生にもわかるほど簡単です。つまり、前提が間違っているのです。

1日24時間のうち、どの時間帯に事故が起きる傾向が高いのか、という統計はある程度信頼できるものです。この統計が正しいと言えるのは、1日が24時間の周期になっているという前提があるからです。そのデータに、より多くのシステム的な要因(たとえば季節、日照、交通量、道路の構造、労働環境など)を含めるとより正確なデータが得られるはずです。

一方、干支を基準に考えるというのは、12年周期が所与のものであるという発想に基づいています。十二支は中国から入ってきた時間の考え方ですが、それを年の単位に当てはめるのは科学的ではありません。1日24時間を干支と同じ12で割ろうが、10で割ろうが、5で割ろうが問題はありませんが、地球の誕生以来の年月を12年周期で捉えるという発想は、24時間単位で物事が繰り返されるというのとは根本的に違います。この前提の違いに疑問を抱く人がいないことは大きな問題です。教育の問題かもしれません。

株式市場の方では、「卯年は跳ねる」などと言って、「2023年は景気が必ず上向く」とか「卯年は飛躍の年だ」と訳知り顔で語っている人がいます。彼らは「そうなるといいねえ」という個人の願望を、いつの間にかトレンドの問題にすり替えて、ポジショントークを始めます。専門家が言っているのだからそうに違いないと思い込むほどの知性のない人が、株式市場にお金をどんどん突っ込んでくれれば、自分たちが儲かるのだから別にどうだっていいだろうと言うわけです。非科学的であるだけではなく、非倫理的です。彼らは過去数十年を振り返って、そうだったというデータを出してきますが、そもそもその12年周期の発想の間違いに気づけないくらいですから、非常に愚かしいと思います。そんな愚かな人間たちを信頼する人は彼らよりも愚かであると言うことを証明しています。

今日はさらに驚いたことがあります。テレビで気象予報士が株式市場の利害関係者と同じことをしていたからです。気象予報士になるには物理や数学ができないといけないそうですが、そういう難関試験を突破した人でも、小学生並みの科学的発想がないことに腰を抜かしました。

気象予報士の女性は統計データを見ると、卯年は日本に襲来する台風の数がもっとも少ないと語っていました。1億年くらいのデータなら信頼できますが、彼女が持ってきたのはたった数十年のデータです。横軸が極端に短い折れ線グラフを持ってきて、このグラフを見る限り、こういう傾向があると言っているだけです。たしかにそのグラフの解釈の仕方は間違ってはいませんが、統計の取り方自体が間違っています。

サイコロを振る回数を多くすればするほど、6の目が出る回数は6分の1に近づきます。私も実際に息子の夏休みの自由研究で1000回くらいサイコロを振って、50回の時点、100回の時点、200回の時点、1000回の時点などと細かくデータを取ったことがあるので、間違いありません。(実際に1000回までやったかどうかは定かではありませんが。)ところが、その気象予報士も、株式市場関係者も、サイコロをたった6回くらい振っただけで、6の目が2回も出たと言って、6の目は3分の1の確率で出る傾向があるなどと真顔で言っているのです。そんなふうに恐ろしく視野が狭い人がいたとしたら、「お前は馬鹿か!」と一笑に付すのが普通の人の感覚でしょう。仮に学生がそんな論文を大学に提出したら、一発で落第です。当然の判断です。

1日の単位を12で分割できるからと言って、数10億年の単位も12の周期で割れるという発想の間違いに気づけないのは残念なことです。十二支で分けて考えることができるのであれば、100年単位で見ることも可能ですし、同時にその分け方が正しいのかどうかさえ怪しいものです。欧米ではそんな十二支の発想がないので、正月だからと言って、今年はこう言う年になる傾向があるなどというネタはぶちかますことはありませんが、毎年毎年、日本では、多くの人たちが、その言説を繰り返すので、その発想そのものの間違いに気づけなくなってしまっているようです。ネタだと思って面白がるのは大人ですが、真実だと信じてしまうタイプの人間は確実に小学生以下の知能しかないと思います。



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