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渋谷実監督『本日休診』 (1952年、松竹) [映画]



原作は井伏鱒二。

この作品を見るのは2度目です。NHKのBSで放送されたものを10年ほど前に見ました。本来は白黒映画ですが、これはAIでカラー化されています。割と自然です。

古い日本映画が好きな人なら誰でも、錚々たる俳優陣に目の玉が飛び出ます。柳永二郎、淡島千景、中村伸郎、岸惠子、三國連太郎、佐田啓二、鶴田浩二、長岡輝子、十朱久雄、多々良純、望月優子。よだれが出ます。作品に出てくる登場人物たちの多くは貧しいのですが、映像的には非常に贅沢です。

舞台は三雲病院。出産から刺青を抜く手術までなんでも診る個人病院です。三雲先生(柳永二郎)が病院を再建してから1周年。それを記念して1日だけ職員たちに休みを与えます。玄関に「本日休診」の看板を掲げ、先生とばあや(長岡輝子)は居残りを決め込むのですが、それにもかかわらず、病院にはひっきりなしに人が訪れます。その大多数は治療費を払うこともままならない貧乏人です。そんな人々のドラマがたくさん嵌め込まれています。

三雲先生は「医は仁術なり」という言葉を地で生きています。貧しい患者からは治療費の支払いを待ってやったり、いついかなる場合でも笑顔を絶やさず、貧しい人々に希望を与え続けるその表情に、私は自分の人生を反省させられました。

「生まれたからには、親も子も、男も女も幸せになることだよ。」

いい言葉ですね。

負傷したガンが仲間に合流し、日本を旅立つところを見送るラストは映画史に残る名シーンだと思います。戦争で精神を病んでしまった勇作(三國連太郎)の満足そうな表情が作品の意味を決定づける鍵となっています。


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