岩内克己監督『エレキの若大将』（1965年）

エレキの若大将 - Wikipedia

この作品を見るのも２度目です。漫画みたいなストーリー展開なので、リアルなものを求める人は嫌いかもしれませんが、私は大好きです。若大将シリーズは、主役が草刈正雄に交代する前まではすべて観ました。18作目の『帰ってきた若大将』（1981年）も観ています。草刈正雄になる前に、一度別の俳優（大矢茂）を起用した第17作の『若大将対青大将』（1971年）も観ましたが、あれはひどかったです。そのせいで、草刈正雄のシリーズは一本も観ていません。

『エレキの若大将』のあらすじを思いっきり簡単に紹介すると、若大将・田沼雄一（加山雄三）が、勝ち抜きエレキ合戦に出て優勝し、自身が主将を務めるアメリカンフットボールの試合でも勝利に大貢献するという話です。端折りすぎですね。



若大将は青大将（田中邦衛）の飲酒運転事故の身代わりになり、事故相手の星山澄子（星由里子）と示談に持ち込むのですが、事故の費用までかぶらないといけなくなります。若大将は澄子が勤める楽器屋を訪れるとそこで勝ち抜きエレキ合戦の話を知り、賞金稼ぎを狙って、近所の蕎麦屋の出前をしているタカシ（寺内タケシ）や青大将たちと出場するのです。

話が逸れますが、女の子４人組のバンドの一人が、澄子さんにエレキギターを渡して、「G線（ゲーセン）が切れたので、張っておいてね」とお願いするシーンがあるのですが、太い方の６弦からEADGBEですから、３番目に太い弦が切れたということです。ありえないでしょう。確かに私の耳には「ゲーセン（G線）」と聞こえました。１弦の「エーセン（E線）」ではなかったはずです。それに、ギターの場合は１本切れたら、通常は全部交換するものです。



メンバーが使っているエレキギターは、ヘッドの形からもわかりますが、テスコという楽器メーカーのものだそうです。モズライトではないんですね。

田中邦衛はまったくギターが弾けないことがわかります。ひどすぎます。４人ともギターという編成は、ベンチャーズからみたいです。ベースがいないというのは当時としてはよくあったのかもしれません。



司会はシェケナベイベーの内田裕也です。



９回勝ち抜き、ジェリー藤尾らのバンドと対決し、優勝賞金10万円を獲得します。今だと100万円くらいなのかもしれません。1965年（昭和40年）の大卒初任給が23,000円だそうですから、10分の１近いです。

ジェリー藤尾は、自分のバンドに勝ちを譲るように青大将を脅迫し、青大将はアンプのコンセントを演奏中に足で抜いてしまうのですが、寺内タケシが即座につないで、結果的に勝利をものにします。

その後、バーで、ジェリー藤尾らと田沼らは大乱闘を演じ、１ヶ月の停学を食らってしまいます。タカシと田沼はプロになることを誘われ、ブルージーンズというバンド（寺内タケシのバンド）を結成し、日光のホテルで修行をします。そこへ、愛する田沼を追いかけて澄子さんが青大将のクルマでやってくるのです。



日光の戦場ヶ原で「君といつまでも」を澄子とデュエットするシーンですが、加山雄三はこの唐突なシーンを撮らせた監督に怒りを感じていたとエド山口さんがYouTubeで語っていました。確かに、加山さんは怒っています。怒りの原因は、澄子に初めて聞かせる歌なのに、なぜ一緒に歌えるのか、疑問だとのことです。漫画みたいなストーリーなのですから、私は別にいいと思いますけどね。





青大将の乗っているオープンカーはなんというクルマなのかわかりませんが、すごく格好いいです。また、トランクにたくさんの荷物が積めるのも魅力的です。青大将はトランクからたくさんのキャンプ道具を取り出して、こんなに優雅なセットを作ってしまうのです。このスクリーンショットにはありませんが、赤電話まであります。

この後、青大将は澄子さんを襲うのですが、中禅寺湖周辺を馬に乗ってホテル経営者の娘さんと散歩していた田沼が偶然発見し、澄子を救い出します。加山雄三が馬で速駆けするシーンは、惚れ惚れするほど格好いいです。戦国武将が戦（いくさ）に出陣するときのようです。





ホテル経営者の令嬢の父親に、娘と結婚してくれないかと、頼まれるシーンです。加山雄三の実のお父様、上原謙さんです。



最後に、アメリカンフットボールの試合で優勝し、その祝勝会（と同時に破産した「田能久」を復活させたことを祝う会）で、「君といつまでも」を歌うシーンでは、笑顔です。やはり、戦場ヶ原では、加山雄三は怒っていたことがわかります。