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成瀬巳喜男監督『あにいもうと』 (1953年、大映) [映画]



室生犀星の小説を水木洋子の脚本で映画化したものです。

舞台は多摩川のほとり(神奈川県側)。主役は森雅之と京マチ子です。妹思いの兄(森雅之)が、身を崩した妹(京マチ子)を大事に思うあまり、殴り合いの喧嘩にまで発展するというアンビバレントな兄妹関係が物語に中心に据えられています。

当時としては、特に田舎の価値観では許されないような、性のタブーが扱われていますが、70年後の我々から見たら、わざわざ目くじらを立てるほどのものではありません。しかし、未婚の妊娠がこれほど大きな問題として扱われていたのかと思ってしまうような私は、性の観念が乱れているのかもしれません。

配役に関してですが、小柄で清楚な久我美子(妹)の存在があるからこそ、大柄でセクシー系の京マチ子(姉)との対比で物語が引き立っているように思えます。同じく、引き立て役として、浦辺粂子がいい味を出しています。口をあまり開けずにボソボソと話すおばあちゃんが可愛いらしいです。当時はまだ若かったと思うのですが、すでにおばあちゃんです。(そういえば、菅井きんも若い頃からおばあちゃんでしたね。)大きなおっぱいも垂れちゃっています。浦辺粂子と聞くと、私の世代としては、脊髄反射的に、片岡鶴太郎のモノマネが頭に浮かんでしまい、笑みがこぼれます。

京マチ子を孕ませた24歳の学生を演じているのが、船越英二です。1980年代のTBSドラマ『熱中時代』の校長先生役が私の脳裏に焼き付いています。船越英二は風貌からして、生真面目そうだし、学生役としては老け顔なので、なんだか憎めない感じです。兄姉妹の父を山本礼三郎が演じていますが、結婚前の娘を妊娠させた船越英二に対して、怒りを抑えて「小畑さん」とさん付けして冷静に対応する姿には、怒りとか悔しさとかいろんな感情がごた混ぜになっているところを伝わってきます。このような鬼気迫る演技は見たことがありません。

この作品は、AIでカラー化された版がYouTubeに上がっていますが、気持ちが悪いので、白黒で見たほうが良いと思います。英語字幕なしのものもどこかで見つけたのですが、見失ってしまったので、字幕付きのものを貼り付けておきます。





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