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詭弁(ソフィズム) [雑感・日記・趣味・カルチャー]

「議論をすり替える輩」にダマされる人の盲点 | アルファポリス | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

ここで取り上げられている詭弁(ソフィズム)の4パターンはすべて、私は授業で学生に教えているものです。要するに、因果関係が成立するかどうかという話で、英語では、becauseを使うか、asやsinceを使うか、それとも、それ以外の表現を使うかという問題に関わります。

1. 数ある原因の1つを唯一の原因のように語る
2. まったくの偶然を原因だと語る
3. おまけの要素を原因だと言い張る
4.「第3の要素」を無視して語る

詳しくは、件のウェブサイトをご覧になってください。要点をまとめると、因果関係を正しく捉えなければいけないということです。

私は昨日、宝くじを当てた人たちの対談というウェブ記事を読みましたが、噴飯ものでした。二人とも宝くじを当てるために験担ぎをしているというので、宝くじを当てるためには験担ぎをしなけれないけないという印象を与えるような内容でした。片方は、宝くじを買いに行くまでの道のりで必ず善行をしていると言っていました。善行といっても大げさなものではなく、道端のゴミを拾うのでもいい。そうすると、宝くじが当たらなくても、必ず自分の身の回りに良いことがあるそうです。この発言からも、この方は因果関係を正しく捉える教養を持ち合わせていないことがわかるし、しかも話をすり替えていることに自分でも気づいていないようです。こういう言説が世の中には溢れかえっているのです。

宝くじが当たったのはたまたまであり、その直前に行った行為のおかげで宝くじが当たるという因果関係を証明することは不可能です。一つの結果をもたらすのには、複数の原因が複合的に絡み合い、しかも、偶然が作用しているので、ある程度の条件を揃えて実験をしてみても、同じ結果が出るわけではないでしょうし、科学的に証明するような実験すら実際には行えないのです。

愚かな人というのは、えてして直前に行った行為が引き金になって、ある結果を導き出すと考えます。ある神社に参拝すると、大学受験で志望校に合格するとか、恋人に巡り会えるとか信じるのも同じことです。これもまた科学的に証明できません。証明が不可能なことにつけ込んで、いろんな宗教団体が人間の愚かさを金儲けの道具に利用しています。正月に初詣に行っても、誰にでも良いことが起こるということはありません。むしろ、人混みの中で財布をすられるかもしれませんし、混雑の中でストレスがたまり夫婦喧嘩をして、離婚に発展するかもしれません。本来の宗教というのは、そういうビジネスとは無縁のものであり、社会の安定と(子孫)繁栄、そして心の平安を希求するものではずです。

何度も言いますが、世の中には、呆れ返るほど、詭弁が溢れかえっています。他にも、私がよく授業で使う例は、富裕層は長財布を持っているから、長財布を買えばあなたも金持ちになれるという都市伝説です。都市伝説というか、昔々、電車の広告で見たものです。本の広告でした。いま売れている本だと書いてあったと記憶しています。それにしても、真似をするのは財布ではなくても、靴下や帽子などでも良かったはずですし、富裕層のマネをすれば金持ちになれるというのは、因果関係を逆転させています。金持ちだから、そういうライフスタイルを送っているわけであって、貧乏人が富裕層のライフスタイルを猿真似したところで金持ちになれるわけではないのです。金持ちが原因で、長財布が結果です。この場合、長財布は原因ではないのです。

そんな無教養な本を書いたり、売ったりする人は、意図的に人を騙しているのかもしれませんが、一体どういう育ち方をしたのでしょうか。親の顔が見たいです。こんな詐欺に引っかかる方も引っかかる方です。これが教科書的な詐欺であるということに気づかないような愚かな人がいるからこそ、詐欺師が活動できるのかもしれません。




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