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映画『タイタニック』の最後で、なぜローズが宝石を海に投げ捨てたのか [映画]

ジェイムズ・キャメロン監督の映画『タイタニック』(1997年)で、年老いたローズが海に宝石を投げ捨てるシーンがあります。映画を見たことがない人に簡単に説明しますが、物語は沈んだタイタニック号の財宝を求める金銭欲にまみれたクルーが、乗船客の生き残りのローズにインタビューをするところから始まります。クルーに対して、ローズはジャック(レオナルド・デカプリオ)とのロマンチックな思い出話を語りながらも、けっして宝石の在り処を告白することなく、最後に、宝石を海に投げ捨ててしまいます。

私はその行為の意味が長年わかりませんでした。そんなに貴重なものなら捨てずに取っておいてもいいじゃないかと思っていたのです。画家のジャックが自分のヌードのデッサン画に書いてくれたときに身につけていた宝石なのですから、宝石は愛するジャックとの思い出の象徴です。そんな宝石を捨てるローズの気持ちが私はわかりませんでした。

しかし、ようやくわかるようになってきました。もしかしたら、私が年をとったからかもしれません。物なんて、死後の世界に持っていくことができません。それにその宝石が誰かの手に渡ったら(つまり、誰かに奪われたら)、莫大な金銭的な価値だけではなく、べっとりと手垢がついて、自分の大切な思い出が汚されてしまうのです。だからこそ、ローズは誰のものでもない場所(海)に宝石を「預けた」のです。ローズはジャックのことを忘れるために宝石を捨てたのではなく、ジャックを飲み込んだ海に彼女の人生を預け、海の中でジャックと象徴的に結婚をしたのです。