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『新書アフリカ史』 [本]

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これは、新書であるにもかかわらず、1800円(税別)と高額で、776ページもある恐ろしい本である。辞書か聖書かと見紛うほどの重量を持つこの本を手に取った人は間違いなく、一般的な新書の3倍の厚みと、その重みに驚愕するだろう。これほどのものは、さすがに一人で書くのは無理だろう。数えてはいないので、正確な人数はわからないが、10人以上のアフリカの専門家たちの文章を編纂したものとなっている。

初版は1997年だが、それ以降の20数年間のアフリカの変化を扱った数章が追加されている。この改訂版が出たのは2018年の11月20日。20年前の本の焼き直しとはいえ、ページから湯気が立つほどのできたてホヤホヤに思える。今読んでも内容が新しい。

実は、去年の12月末に友人に紹介され、すぐさまアマゾンに注文したのだが、小包を開封する前から、横綱クラスの厚みと重量に恐れおののいて、正月になるまで開封すらしなかった。そんな畏れを克服し、ようやく半分ほど読み進めることができた。まだ半分も残っているが、これからちびりちびりと楽しみながら読んでいこうと思う。

内容を簡単にまとめると、アフリカの歴史をポストコロニアリズムの観点から(「ポ」の字も出てこないが!)読み解くというもの。ポストコロニアリズムというのは、第二次世界大戦後に、植民地主義あるいは帝国主義の終焉(本当に終わったの?)を受けて、どのように世界の状況が変わったのかを研究する学問だ。1990年代に広まった考え方である。私はその思想をダイレクトに吸収した世代である。

本書は、アフリカ大陸における人類の誕生と進化という理系的な話から始まり、大陸の中で発生したさまざまな民族がダイナミックに移動・交流していく様子、さらにアフリカがイスラム商人たちと対等な立場で貿易・文化的交流をしていた頃の文明的なアフリカの状況を経て、西洋人たちによって侵略され、アフリカ人が野蛮人扱いされ搾取される時代の話が丹念に描かれる。

アフリカを武力でねじ伏せ、領土を分割した西欧列強は、その野蛮な侵略を正当化するために、「俺たちは野蛮人たちに民主主義を教えてやったとか、無政府状態や相互殺戮から救ってやったとか、インフラを整備してやった」などと、西洋がアフリカにさまざまな恩恵を与えたと恥ずかしげもなく主張した。いったいどちらが野蛮なのだと私は言いたい。

この歴史を見るにつけ、我々日本人は、自分たちのことを思い起こす。70数年前、日本は西欧列強に伍していくためにアジアを侵略し、植民地化していった。西洋列強と同じ論理で、「われわれ優秀な日本人(名誉白人!)が遅れたアジアを文明化してやったのだ」と現地の声をかき消す音量で夜郎自大に唱えたのだ。自分たちのなわばりを犯す日本を煙たがる西洋列強は、日本を敵視し、そして見下し、結果的に、アメリカが日本を原爆を使って叩き潰してしまった。

そうして、現在のニッポンはアメリカの属国になってしまったわけである。ぼーっと暮らしている一般の日本人にはわからないらしいが、アメリカはニッポンを柔らかい形で、植民地として占領しているのだ。日米地位協定という、日本国憲法よりも優先される秘密の協定により、米軍が日本を統治し、日本本土は、沖縄を支配している。右翼の日本人としては実に情けない状況が、そして、アメリカの恐るべき実像が、このアフリカ史を鏡にすることで、鮮明に映し出されるのである。外国人に無防備に股を広げて体を許す安倍総理が、いかに左翼的かわかるだろう。

この本は、そういうことを考えるきっかけになる一冊である。気になったら、書店でちょっくらごらんなさいまし。内容も重たいですぞ。非知性的なビジネス書(資本主義と不可分な植民地主義に毒された本!)ばかり読んでいることを恥ずかしくなること請け合い。

追記:「ポストコロニアル」という言葉が、690ページで使われていることを発見。新たに追加された最終章(18章)の中にあります。その用語は索引にも登録されていないし、前半ではまったく出てきません。


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