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黒澤明監督『七人の侍』(1954年、東宝) [映画]



七人の侍 - Wikipedia

この作品を見るのも2度目です。

いわずもがなですが、農民たちが7人の侍を雇い、村を略奪しにくる野武士集団と戦う物語です。3時間20分もある超大作で、途中に休憩時間をはさむ形になっていますが、片時も飽きることがありません。

侍たちを率いる浪人の島田勘兵衛(志村喬)が村を守るための策を講じる間、百姓上がりの暴れん坊である菊千代(三船敏郎)は、農民たちが「落ち武者狩り」で得た甲冑や槍を引っ張り出して来ます。それを見た他の侍はためいきをつき、「オレはつくづく農民を斬りたくなった」とこぼします。それに激怒した菊千代が「確かに百姓は汚いが、百姓を汚くしたのはお前たち侍だ」と感情を爆発させます。島田はその言葉を聞いて涙をこぼすシーンがこの作品のキモだと思います。気高き侍たちが「ノブリス・オブリージュ」の精神で百姓とともに戦うという単純な話ではないと思います。

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ネタバレになりますが、とはいえ、有名すぎるので気にすることはないのですが、もう一つのキモは、すべてが終わった後、島田勘兵衛(志村喬)が、「今度も負け戦だったな。勝ったのは百姓のほうだ」としんみりとつぶやくシーンです。

黒澤監督はこの物語を太平洋戦争と重ねていたはずです。日本国民の戦争体験を昇華しようとする試みだったように思えます。私が言うのもおこがましいですが、語り尽くせぬほどの「コクと深み」のある映画です。

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