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福田恒存「日本文化礼賛ブーム」「近代化と西洋化」 [雑感・日記・趣味・カルチャー]



日本は西洋化を通じてしか近代化はできないが、西洋は西洋化を経ずに近代化した。日本は物質的に西洋化+近代化したが、精神面ではまだ近代化していないと福田恆存は言う。

この頃では、アメリカ全体で、急速に物質的な近代化を果たした日本を礼賛する動きがみられる。だが、敗戦直後には、進駐軍(マッカーサー!)が日本人は12歳の少年だと言って、日本は幼稚だ、未熟だと馬鹿にしたではないか。急に掌返しをするのは、何か魂胆があるはずだ。それはアメリカが日本を支配することを永続化する「日米安保条約」に関する国民の反対の声を抑えようとするものだろうと疑っている。慧眼である。また、それに調子を合わせて、いい気持ちになっている日本人がいることを嘆いている。植民地根性で、進駐軍が求めていないことまで、忖度して余計にしてしまうような態度がある。それこそ、精神の近代化が実現していない証拠ではないかと。

21世紀に入った今も、ますます「日本スゴイ!」という番組がテレビで気持ち悪いくらいに流れ続けてている。よくあるのは、日本に暮らす外国人をスタジオに呼んだり、外国人旅行者を取材し、日本の素晴らしいところを語ってもらうという企画だ。明らかにターゲットの視聴者は日本人である。日本に暮らしているものとしては、それらの情報は何の役にも立たない。ただ、褒められて嬉しいというだけなのだ。日本人の幼稚さがにじみ出ている。

福田の話を聴きながら、終始疑問に思いつづけたのは、近代化とは何かという問題である。福田は、あるレポートを参照しながら、独自にいくつかの項目に分けて説明しようとしている。そこで音声が途切れてしまうので、話が私にはよくわからなかった。福田の挙げたのは、合理化、機械化、組織化、画一化、制度化。これだけでは、精神の近代化の意味まったくわからない。画一化がどうして近代化なのかという疑問も新たに生じる。

私が考えるに、精神の近代化が果たされた状態というのは、国民がひとりひとり教育を受けて、自分が民主主義国家を担う市民であることを自覚した状態なのではないかと思う。いまはまだまだその地点に達するまでには遠すぎるところを日本人は歩んでいる。おそらくいまは、踵を返して、スター地点に「忘れ物」を取りに行っている状態かもしれない。日本人は極度の健忘症だから、その忘れ物が何だったのか、また忘れ物を取りに向かっていることすら忘れているかもしれない。日本人はみな、財布と買い物リストを忘れて買い物に行ってしまうサザエさんなのである。