SSブログ

倒れていた男性を救助しました。 [雑感・日記・趣味・カルチャー]

今週起きた話です。夜遅く帰宅する途中、自宅の前の通りに差し掛かると、道端に男性が倒れ、スマートフォンをいじっている様子が目に入りました。スマートフォンの先には、何かがあるようです。暗闇のよく見えませんでしたが、オジサンはきっと大の猫好きで、真っ黒な猫でも撮影しているだろうと通り過ぎました。しかし、通り過ぎる瞬間、それは猫ではなく、まごうことなき帽子でした。

ただならぬ雰囲気を感じ取り、すぐに踵を返して、オジサンに近づき、「大丈夫ですか?」と尋ねると、「すいません。」との返答。

「このまま寝ていたら、車に轢かれちゃいますよ。立てますか?」と尋ねると、オジサンは自分でぐいっと上半身を持ち上げようとしたのですが、頭を数センチ上けただけで、すぐに冷たいアスファルトの上にベタッと倒れてしまいます。

「いまどこにいるのかわからないんです。」
「えっ!」

大変だ。

「救急車を呼びましょうか?」
「いま、電話をかけているんです。」
「私が掛けましょうか?」

オジサンはしばらくスマホをいじり続けていましたが、かけることができないようなので、オジサンからスマホをひったくり119番に電話をしようとしました。

もしかしたら、脳梗塞なのでは。

しかし、つながりません。他人のスマホをいじるのは、難しいです。どういうことなのかよくわかりません。画面には住所録が立ち上がり、何々ちゃんという人の情報が表示されていました。

よくわからないので、私は自分のスマホを取り出し、電話アプリを探して、119を押しました。電話がつながったようなのですが、先方の声が聞こえません。それを2回繰り返して、はたと気づきました。Bluetoothでイヤホンにつながっていたのです。すぐに、Bluetoothを切って、電話をし直しました。ここまでに3分以上かかってしまいました。

「火事ですか、救急ですか?」と期待通りの声。

「男性が道端に倒れているのですが。」
「外傷はありますか?」
「なさそうです。」
「痛いところがあるかどうか聞いてみてください。」
「痛くはないそうです。」

その後、名前と年齢を確認しました。私には聞き取れませんでしたが、119番の人は、オジサンの名前を聞き取ることができたようです。オジサンは80歳近いようです。その年齢が正しいのかどうかわかりません。

「救急車を呼ぶことを御本人は求められていますか?」
「そうみたいです。自分で119番に電話をしようとしていましたから。」

そんなやりとりをしている間に、私の家の斜め向いに住むご主人が通りがかって、「どうしたのですか?」と聞かれれました。その前に、近所のおばさんが私達に気づいたのですが、そそくさと逃げていってしまいました。女性というものは、そういう冷たい生き物なのでしょうか。

ご主人に事情を説明すると、このままだと轢かれてしまうので、通りの両側で、クルマが入ってきたら、止めましょうという話になり、しばらく二人でオジサンに話しかけながら、様子を観察していました。

オジサンは、おもらしをしているということに、近所のご主人が気づきました。道端に、手提げカバンと手土産(海苔のような乾物)が置かれ、立ち小便をした痕跡がありました。おそらく、立ち小便をしている最中に、軽い脳梗塞になって、倒れてしまったのではないかと、二人で話をしていると、クルマのヘッドライトが目に入りました。

急いで、クルマを止めると、男性は窓を開けて、「どうされたのですか?」と質問しました。

「申し訳ないのですが、男性が道に倒れているので、迂回していただけますか?」と丁寧にお願いし、道を変更してもらいました。オジサンを二人で持ち上げて移動することもできたのかもしれませんが、素人の判断で、余計なことをして、病状を悪化させてはいけないと思い。そのままにしました。

そのうち、遠くから救急車のサイレンが近づいてくるのが聞こえてきました。

ほっとひと安心です。

隊員が到着し、救急車から担架を下ろし、運んできました。隊員は二人がかりで、オジサンを持ち上げ、担架にドサッと乗せると、「だいぶ飲んでいるようですね。」と笑いました。「あとは大丈夫ですよ。」

残された我々は、酒臭くはなかったですよね。不思議ですね。脳梗塞じゃないかと思ったのですが、どうなんでしょうねえ。」という話をしながら、「お疲れ様でした」と言って別れました。

暖かい家に戻ってきて、事の顛末を妻に報告すると、白けた様子でした。元来、丈夫な生き物である妻は(義父の遺伝でしょうが)、困っている人や、弱い人、病気の人、年老いた人にひどく冷たいのです。そんな冷淡な人に何を言っても埒が明かないので、冷めた夕飯を食べて、暖かい風呂に入りました。

ちょっとその晩は、なかなか寝付けませんでした。こういうことは他人事ではないですからね。

あとで調べてみたら、脳梗塞は、必ず、同じ症状になるわけでもないようです。言語障害もあるし、半身不随もあるし、そうならないひともいるし、とのことで、結局、オジサンの命は助かったのかどうか、ただの酔っ払いだったのかどうか、その後、奥様にこっぴどく叱られたのかどうか、私にはわかりません。

年末年始、あちこちで、酔っぱらいが救急車で運ばれたのかもしれません。そうならないようにお酒の好きな人は注意すべきですね。酔っ払って道端に寝ていたら、クルマに轢かれる可能性もありますし、いまは冬なので凍死する可能性ありますから。

この話を母親にしたら、もしかしたら、オジサンは痴呆症かもしれないと教えられました。確かに、酒臭くはなかったし、頭痛はなかったようですから、脳梗塞ではないかもしれません。いまどき乾物のお土産など買って帰る人も少ないでしょうから、オジサンは若い頃を思い出して、放浪中に、そんなものを買って帰ってきたのかもしれません。


共通テーマ:日記・雑感