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バンクシー、小池都知事、MICE [雑感・日記・趣味・カルチャー]

【小池百合子】早とちり小池知事…都が鑑定の“バンクシー作品”には型紙が|日刊ゲンダイDIGITAL

テレビニュースを見ていて、私は直感的に、あれは悪戯だろうと思い、「きっと偽物だね」と、家族に言った直後、「専門家」を名乗る男女2名が神妙な顔をして、「これは本物である可能性がある」などと言い出した。私は腰を抜かし、家族の前ですっかり恥をかかされてしまった。しかし、どうも怪しい。えてして、その道の「権威」の意見というのは信用ならないものだ。

バンクシーはステンシルという手法を使って、町の壁に落書きをする神出鬼没のストリートアーティストだ。ステンシルというのは、型紙で複製することができるものなので、実際のところ、型紙を使えば、本人の手によるものかどうかさえ、本人以外にはわからない。バンクシーは複数存在するという説もあるほどだ。ポップアートの旗手アンディ・ウォーホルがファクトリーと呼ぶアトリエの中でスタッフを使ってキャンベルスープの缶やマリリン・モンロー、エルヴィス・プレスリーをシルクスクリーンで大量に印刷したが、バンクシーは、ポップアートをストリートに持ち出したのだ。

そんな芸術活動をするバンクシーの意図はいったい何なのか。それは大きく分けて2つに集約できるだろう。一つは、芸術作品からauthoirity(作者は誰かという問題)を消去するというアイデアの提示である。モダニズム的な発想であるけれど、これを理解できる人は哲学や文学を勉強した人だけだろう。作者と作品の関係を曖昧にするという作品は、現代人のアートについての概念を根本的に突き崩すものだ。そこがバンクシーの偉大さの一つではないだろうか。

バンクシーのもう一つの意図は、権力者、富裕層をこき下ろすことである。人々の生活を豊かにすると約束しながら、自分の懐を豊かにすることだけしか考えず、環境を破壊して、平気な顔をしているお偉方の心の貧しさを大衆に晒しているのである。さらに、そういう権力者や富裕層は、ただの落書きに高額な値段を付け、売買する。そんな彼らのバカさ加減をあざ笑う形で、人々の価値観の転倒を狙っているのだろう。まさに、バンクシーのアートは、その道の「権威」(autority)をこき下ろすために存在しているのである。もしあれがバンクシーのものではないとバンクシーが嘘でもいいので述べたとしたら、例の二人の専門家も面目丸つぶれである。

今回、バンクシーの手によるものと言われている港区の都所有の防潮扉に描かれていたネズミの絵は、結果的に、小池都知事のバカさ加減を露呈することに成功したわけだ。あの「落書き」をバンクシーからの贈り物だと受け取るような、芸術の価値をお金に換算するしか能のない権力者である小池都知事の愚かさを白日のもとにさらしてやったわけである。さすがは、バンクシーである。

小池百合子都知事が公約違反? 築地市場跡地に「MICE施設」再開発計画報道|ニフティニュース

小池都知事は、選挙公約を破って、築地にカジノを併設する施設を建設しようとしているらしい。その名もMICE。miceというのは、mouseの複数形だ。築地市場からネズミらを追い出した張本人が、築地市場に再度彼らの居場所を作ってやろうというのなら、まさにブラックジョークである。

いずれにせよ、この一件に関しては、バンクシーが関わっていようが関わっていまいが、バンクシーの勝利であることは確実だ。