SSブログ

後知恵バイアス [雑感・日記・趣味・カルチャー]

コロナの恐怖を煽るテレビ番組制作者のホンネ 「羽鳥モーニングショーは良く練られた番組」(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

この人は、「新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザと比べて死者数がはるかに少ないんだから、マスコミは煽りすぎだし、人々は怖がりすぎだ。」と言っていますが、これこそ典型的な「後知恵バイアス」です。終わってからだったら何だって言えます。(このテレビ番組制作者は当初からコロナはインフルエンザよりも怖くないと主張していたことを記憶しています。)確かにインフルエンザより死者数は少ないですが、致死率は高いので、怖がらなくてもいいわけではありませんし、実際、まだこのパンデミックが終わったわけではありません。

そろそろこういうふうに、ドヤ顔で「ほーらね。オレの言ったとおりだろう。怖がっていた奴らはバカだねえ。ヘタレ野郎が!」なんてふんぞり返る人がたくさん出てきそうです。うちの妻もそうです。昨日も妻は母親と電話で「コロナに感染している人なんかどこにいるのよって感じぃ」なんて言っていました。すぐに母親にたしなめられてシュンとしていましたけどね。年寄りは死が身近なので、コロナなんか怖くないというのは、お前らなんか死んでもいいと年寄りに向かって言っているのに等しいわけです。無神経極まりありません。私にはそういう人の気が知れません。

高速道路では全席シートベルトを着用するのは義務です。していないと罰則があります。しかし、ベルトをしていなくても、必ずしも事故に遭って死ぬわけではありません。ベルトをしていても事故で死ぬかもしれません。ベルトをせずに、高速道路でスピード違反をしたり、危険なあおり運転をしても、警察にも捕まらず、事故も起こさず、目的地にたどり着いて、用を済ませて無事に帰ってくる運のいい人もいるでしょう。たからといって、「ベルトなんかしていても無意味。怖がり過ぎだよ。ほーら、死ななかっただろ」と言う人はいません(そういうバカもいるかもしれませんが)。「ベルトをしないと危険だ」と警告する人は「煽りすぎ」なんでしょうかね。それはまた、駐車場のほうが事故が多いのですから、高速道路より、駐車場のほうが危険だと言って、高速道路の危険性を過小評価しているのと同じようなものです。

この書き手は「因果関係」も理解できていないようです。「人々が怖がったためにアメリカのようなコロナの感染拡大は起きなかった」可能性があると考えるべきところ、この人は「アメリカのようなコロナの感染拡大は起きなかったのだから、怖がる必要はなかった」と因果関係を逆転させているのです。この論理にコロリと騙される人はかなり多いと思います。これは非科学的で、非論理的な、きわめて危険な詐欺の言説です。こういう非論理的な人が「後知恵バイアス」の罠にハマるのです。

京都大学の山中教授がファクターXがあるのかもしれないという可能性をほのめかしただけなのに、ファクターXのおかげで日本人は感染しないと信じた人も大勢いたはずです。科学者は、庶民の知性を信じ過ぎです。庶民は彼らが考える以上にバカなのです。迂闊なことをほのめかして、愚かな庶民に期待させてはいけないのです。それより、岡田教授のように、危険を煽ったほうがはるかに罪ではありません。残念ながら、世の中の人はみなバカであることを前提に進めていくしかないのかもしれません。

このテレビ番組制作者が言っているように、テレビ局は(特にテレ朝のモーニングショーは)、視聴率を取るために人を怖がらせる手法をうまく活用しているのは確かです。うちの妻なんて、その手法にまんまと引っかかって、初期の頃は本当に恐怖心にかられてずっとテレビを見ていました。そのうち「玉川さんがこう言っていた、ああ言っていた、政府の方針が玉川さんの言うとおりになっている」などと言うようになっていったのです。ところが、それに反旗を翻すような人たちが声を上げ始め、妻も「あれ? そうでもないないな。私の周りにはただの一人も感染者がいないけど、これはどういうこと?」と事実に気づいてしまったのです。その後、妻は急に、テレビは我々を騙している。まったく信頼できないと言い出して、どんどん陰謀論にハマっていったのです。「エコーチェンバー現象」の典型的なパターンですね。

自分のバイアスに無自覚な人たちはどこにでもいますね。