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ピエール瀧の件 [雑感・日記・趣味・カルチャー]

赤江珠緒が「たまむすび」で涙こらえ謝罪「瀧さんに代わって」 (2019年3月13日掲載) - ライブドアニュース

ミュージシャンで俳優のピエール瀧がコカインを使用していた容疑で逮捕されました。彼の出演作品が店頭から撤去され、オンデマンド配信も停止されています。NHKの大河ドラマの出演も代役を立てるしかないでしょう。その賠償金は30億円に上ると予想されています。

私は思うのですが、むしろこういう過敏な対応のほうがはるかに犯罪的な気がします。コカインは違法な薬物ですから、ピエール瀧が法律を破ったことに間違いはありません。しかし、彼個人には罪はあるので、ラジオパーソナリティとしての出演はもちろんできないでしょうが、作品の中で演じられている役柄には何の関係もありません。作品には罪はないはずです。こんな対処の仕方をしていたら、俳優が罪を犯すたびに、世の中から作品が消えていくことになります。これは文化を貧困化する危険な対応だと思います。

作品には罪はないというのは、こういうことです。たとえば、小説の中で主人公が殺人を犯したとします。もちろん、作者が殺人を犯したわけではありません。世の中には、作者と主人公が同じだと思っている人も少なからずいるようですが、それは間違いです。小学校から教育を受け直したほうが良いでしょう。

それと同じで、俳優自身の生活と、作品の中で演じられている登場人物とは無関係でです。印税などの面を考慮すれば、そういう厳しい対応もわからないではありません。麻薬の売人を通じて、犯罪組織にお金が回るのですから、それは厳しく取り締まる必要があるのは確かです。しかし、誰もが、この点を完全に見逃し、役柄=俳優そのものだと思っており、罪を犯した俳優が出ている作品を世の中から慶していくことのほうがはるかに恐ろしいことだと思います。

マッサージ嬢に性的暴行を加えようとした俳優の新井浩文の件でも同じようなことが起きましたが、やりすぎだと思います。もし私もそういう環境にあったら、こらえられなくなってしまうかもしれません。ストレスや欲求不満や疲れが溜まっている状態で、きれいなお姉さんに体を触ってもらえたら、私も下半身が反応してしまうと思います。男はそういう生き物なのです。私は世の中の反応のほうが、はるかに過剰にして過敏で、危険だと思います。

ピエール瀧や新井浩文はどちらかというと、犯罪者よりも病人に近い存在です。人を殺したわけでもないし、金品を強奪したわけでもないのです。特に麻薬使用に関しては、犯罪と決めつけることなく、アルコール依存症と同じように捉えて、治療が必要な病気と見なすべきではないでしょうか。(実のところ、病気かどうかの境目も曖昧です。)

ピエール瀧を倫理的に(小学校の道徳の授業のように)批判するマスコミのヒステリーはいつものことで、あの「上から目線」には吐き気を覚えます。むしろ、彼が麻薬を使用せざるを得ない状況に追い込まれた原因や、麻薬を提供した側の罪を問題にすべきでしょう。それがジャーナリズムの役目です。風紀委員気取りな奴が多すぎます。ピエール瀧は加害者かもしれませんが、犠牲者の側面もあるのです。

「バイトは教育で真人間にしろ」が、ブラック企業につながる理由 (1/8) - ITmedia ビジネスオンライン

このようにしてバイトを犯罪を犯す可能性のあるモノとして調教し、かつ酷使するのは、企業側の犯罪です。いくら研修なんかしても、どうせ給料は上がらないのだから、職場に対する忠誠心や満足度はますます下がるはずです。企業側が従業員に対して金銭的な見返りも与えず、馬鹿の一つ覚えのように責任や法令遵守の精神ばかり求めれば、従業員はやる気を失います。従業員に責任をもたせるには、いつでも首を切れる状態にしておくのではなく、安定した生活を保証し、給料と自由度を上げるしかないのです。責任を持たせるには、自由が必要です。

教職のブラックすぎが原因!? 教育学部の志願者数が約10年で「激減」の衝撃 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

これは国家的犯罪です。国の方針で、国立大学の教育学部や文系学部が潰されているのです。文系教育こそが、民主主義の維持発展の中核に存在し、国家の存亡そのものに関わっていることを理解しない阿呆な政治家や官僚の責任です。こちらのほうがピエール瀧やバイトテロよりも遥かに重大な犯罪です。


追記:

荻上チキさんはよくわかっていますね。私は上の文章を書いた後に、荻上さんの以下の記事を見つけました。何が書かれているかは予想がつくので、いまだちゃんと読んでいませんけど。

荻上チキさん、ピエール瀧容疑者の逮捕報道でメディアに苦言 「何を目指しているのか…」 | ハフポスト

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